建物を建てる目的は

 建物を建てる目的はそこに住む人、そこを使う人の「命」を守る、これが大儀です。

 「命」を損なう建物は、建物本来の目的を見失った建物です。

 2015年の春、日本初のKSS構法による一時間耐火の木造4階建てビルが完成しました。建築中、完成時、完成後の見学に2千人近くの人たちが訪れました。

 私たちが引っ越して、生活が始まったのは建物が完成してから半年近く経ってからです。

 ビルの完成が近づいた2014年11月(株)シェルターは木造2時間耐火の認定を取得、これにより14階建ての木造建築が可能になりました。

 そのことを知った私は、(株)シェルター社長の木村一義氏に、木造建築は 「命」を守る建物として地上より足元20mに抑えることを提言しました。

 これまでの鉄やコンクリートを使った建物は経済、効率優先の土俵です。

 木造の建物は、山の命、地球の命、人の命、「命」を大切にする土俵だからです。

 以前、船瀬氏と学習塾を長年経営されている女性の方を取材した際、6、7階から上の階で生活している子どもたちは多動症の子が多いと聞きました。地面から離れる程に肉体的、

 精神的に支障をきたすこと、特に流産率の高さを含めた胎児への影響が危惧されています。

 2018年1月半ば、木村社長から3人で食事をとの誘いがありました。

 船瀬氏と私が席につくなり社長は、「お二人のお蔭でここまで来ることができました。昨年12月に木造3時間耐火の認定を取得しました。これで大規模木造建築が可能になりました」と、大きな体を曲げての挨拶、私は恐縮するばかりでした。

 久し振りの3人、この夜は大いに盛り上がりました。

 私たちの出会いは、船瀬俊介著「コンクリート住宅は9年早死にする」を読んだ木村社長から著者に会いたいとの連絡をいただいき、2002年12月26日に会いました。
 初対面で木村社長の、「木の土俵づくり」が大切との趣旨に大いに賛同しました。
 しかし、私たちが応援するには企業主体ではない別の機関づくりの必要性を提案、そこで発足したのが次世代木質建築協議会「NEWCA(ニューカ)です。これで私たちも非常に動きやすくなり「NEWCA」主催の船瀬俊介氏講師の講演会を全国各地で行いました。

 出会って間も無い頃、社長へ「建物が頑丈で長持ちしても、そこに住む人が早く亡くなっては本物の住宅ではない。住まいは安全な空気が大切です、ビニールハウスの中に住んでいるような建物をつくっていては、本物にならないですよ」と。数日して山形へ行くとモデルハウスの入口に設置した看板に、ビニールクロス撤廃宣言と書かれていました。

 次に、日本の木を使うことを訴えました

 後日、私の提案の中でこのことが一番厳しかったと言われました。当時使用していた木材は調達しやすくしかも安い輸入材が全体の7、8割だったことを聞きました。

 利益を優先すると躊躇することが当たり前、それを即刻国産材に切り替えた。

 そんな事情を知った私が、よく切り替えましたね、と言うと、「伊藤さんの言うことが正しいからです。もちろん手間ひまかかることですから、難儀なこともありましたでも、地元の木を使って建てることに対して、みなさんが喜んでくれるのです」と。

  2018年2月16日「国産材活用による地方創生トップセミナーin東京」「都市の木造化への挑戦」 主催一般社団法人日本木造耐火建築協会(会長・木村一義氏)が、東京、赤坂で開催されました。

 第一部のセミナーに国や地方行政の関係者や企業から140名余りの参加者で大いに盛り上がりました。今まで鉄筋コンクリートや鉄骨でしか建てられなかった中高層・大規模建築物が木造で建てられることになり盛り上がることは当然のことです。

 第二部の交流会には50名程の方が参加、なんと乾杯の音頭に私が指名されました。

 乾杯の前に一言とのことでしたから、3時間耐火が認定されたことで木造高層のビルが可能になったのは結構なことです、が、水を差すようで悪いが、何の為に建物を建てるのか、木造の建物は住む人の「命」を守るための建物として、高さを足元20m以内に抑えることの大切さを訴えました。少し異様な雰囲気になりました、が、そこで乾杯。

 暫くして、木村社長が近づいてきて、「伊藤さん木造で何10階建てでも建てられるのに、6、7階で抑えることはかっこいいよね」と、私は、うんカッコイイと答えました。

 その後、「大規模木造庁舎の建築について」の基調報告をされた、山口県長門市の大西市長をはじめ10名程の方と名刺の交換をしました。

 莫大な費用と大変な努力の結果に取得した特許、認定工法、これを(一社)日本木造耐火建築協会に加入している企業には使用を認める。これには驚きました。これにより日本の多くの樹木が活かされ、多くの木造の建造物が誕生します。「木造都市」が実現します。

 また、大勢の人たちの「命」が救われます。木村一義社長、男前。