世論時報8月号 暮らす人も作る人も喜ぶ「オフィス」~千葉県鴨川市~

暮らす人も作る人も喜ぶ「オフィス」~千葉県鴨川市~
施工業者も健康になる家づくり

最後の工程は住む人使う人が行う

 本誌の先月号(7月号)に、「呼吸する住宅はウィルスを抑制する」と題した記事を掲載した。内容は、千葉県鴨川市にある、創業1906年の観光土産食品製造・販売の老舗、株式会社亀屋本店が、低温乾燥させた「生きた杉」で、同社の事務所兼倉庫と同社社長(末吉晃一氏)の終の棲家を建築している様子を取材したものだった。

 本特集内で、「生きた杉」を取り上げる上で、その予告的役割の意味も籠めて、まだ建築途中ではあったが、無理を言って取材させてもらった。

 その取材から約一ヶ月経ち、「事務所兼倉庫が完成しました」との連絡を頂いたので、是非写真を送ってもらうようお願いした。

 末吉社長に完成した建物の感想を伺うと、次のように語ってくれた。

「中に入ると、本当に空気が清々しくて、気持ちが良いです。何よりこの建物は呼吸していて、生きているという点が、他との決定的に違うところです。呼吸を感じることを忘れずに過ごして行きたいです」

 この事務所兼倉庫を紹介する上で、特筆すべき点は三つある(伊藤氏が携わる建物には全て共通する点であることを補足する)。

 

 一つ目は、電気工事の配線を工夫することで、建物内の電磁波の発生を、最小限に抑えた点だ。これは、長年、電気工事会社を経営し、電磁波が体にとって有害であることを肌身で感じてきた伊藤氏だからこそ編み出せた技である。

 二つ目は、建物の最後の仕上げに、天然成分100%でできた木材の保護液「ハッピーウッド」を塗布した点だ。この保護液を塗布することで、木材の劣化を防ぎ、傷がつきにくくなる効果がある。そして、ユニークなのは、工事の最終段階として、このハッピーウッドを塗布するのは、施工業者ではなく、住む人使う人自身に塗布してもらうのが伊藤氏のこだわりだという。

 それは、「建物はあくまでもそこに住む人のものなので、建物を完成させる最後の工程を、自分の手で行うことで、その建物への愛着を増して欲しいのです」との狙いがある。

 

建築中に貼り出された一枚の通達文

 三つ目は、建築中に貼り出された一枚の用紙だ。

 その用紙には「当建物の建設に携わる皆さんへ」の書き出しで始まったいる。以下全文を記載したい。

 

 

「安全に留意し、無事故で竣工することを第一として携わってください。健康を損なうネオニコチノイド(農毒薬)入りの建材は一切使用しません。

 この建物で使用する木材は全て『国産杉』。45°Cの木材乾燥装置『愛工房』で乾燥した木の命(酵素)を損なわない、生きた『無垢材』を使用します。
生きた『無垢材』は現場の作業者へ、現場周辺へ、安全な空気を提供します。
生きた『無垢材』を使った建物は、最適な住空間と安全な空気を提供します。

 健康と環境に一番大切なもの、それは、きれいな空気、安全な空気です。

 スギ材、ヒノキ材のウィルスに対する試験結果、ウィルスの不活化、抗ウィルス活性値が高く、接触すると感染力のあるインフルエンザウィルスの数が減少することが明らかに。平成28年度『奈良の木で健康になる』実証事業で発表。

 タバコの煙は多くの有害物質を含み、周辺の空気を汚します。喫煙は(加熱式たばこも)当人だけでなく、周りの生命も脅かします。

当建物の建設に関わる皆さんは、建物内及び建物周辺での喫煙は(加熱式たばこも)行わないでください。

 この建物は、『アイ・健康と環境を考える会/アイ・ケイ・ケイR』の協力で、安全・安心の『呼吸住宅R』を、作業に携わるもの全員の協力でお届けします」

 住む人だけでなく、その工事に携わる人達全てが健康であってこそ、建築産業が健康産業に変わる。その本気の思いが強く伝わる文章である。